My Bloody Valentine本 "Loveless"

MBVのリマスター盤のように発行が遅れるかと思われたMBV本が出ました。

※しかしいつの間にか"Loveless"というとアニメのほうがよく知られているみたいですなあ。まあNew Orderの"Technique"にも同名タイトルがありますけど。

内容的にはだいたい知られている部分、通説とは違う部分(制作費の件)、少し生々しい件(Kevin+Bilinda)がほどほどに。あの頃の他のバンドと違わないところも意外と多い(とにかく金がないとか)。よくあるバンド本のように、はがさなくてもいいカサブタをはがしたようなものにはなっていないようです。たぶんそれはMBVがまだ現役であるからでしょう。

ところで前にも書きましたが、ブックカバーのLovelessの書体、"Bauhaus Light"が使ってあるんだけれども、これは変。Lovelessの時は"Kabel Bold"に変わったのですが、Isn't Anythingはすべて"Wexford"という書体が使われています。

この書体はかなり異形というか畸形で、普通に組んだらろくなものではありませんが(そのへんてこりんさが当時のMBVにはちょうどいいんですが)、小文字でmy bloody valentineとつづるとなぜかきっちり決まります。1988年当時はまだMacが一般的というほどでもなかったこともあって、きれいに手組みしてあります(日本盤は英米盤ジャケットのスキャンと思われる)。日本盤再発が出た1998年頃はほぼジャケット制作もDTP化されていたはずで、デジタル化されていないWexfordは見あたらず、やむなく「似たようなもの」としてBauhaus Lightが使われ、それ以来使われ続けることになってしまったようです。でもBauhausでは妙にくねくねしてかわいいのであって、「異」や「畸」の部分が感じられないのです。

このブックカバーではバックにスキャン画像と思われるMBV文字が入っていますが、できることならきっちり"Wexford"を使っていただきたいものです。なお、今となっては知る人ぞ知る書体清刷集「嶋田モンセン」には、この"Wexford"が掲載されています。

組み直すとこうなるのです。

ぜひともこちらでよろしく。

しかし公式サイトでもKabel Boldがベースになっとりますなあ(Lovelessデザインベースだから仕方ないか)。Wexfordってアイルランドの港町みたいですけど、こっちのほうが雰囲気出てると思うけどなあ。しかしいつまで昔の写真使うんだろこの人たち。